こんな症状は認知症の可能性も
- 人や物の名前がすぐに思い出せないことが増えた
- 水道の水を出しっぱなしにすることが多くなった
- 以前より意欲ややる気が低下している
- 突然の状況に対して適切な判断ができないことがある
- 同じ質問を何度も繰り返す
- 食事をしたかどうか覚えていない場合がある
- 外出時に帰り道がわからなくなったことがある
- 感情が突然強くなる、感情の起伏が激しい
- やりかけのことを忘れてしまうことがある
- あまり服装を気にしなくなってきた
- 匂いが分かりにくくなってきた
上記のような「もの忘れ」の症状がある場合、認知症の初期症状の可能性があります。加齢によるもの忘れではない場合、早期発見と適切な治療によって認知症の発症を防いだり進行を遅らせることができます。本人が気づかないケースも多いため、周囲の人が受診を勧めることが重要です。家族に上記のような症状が見られる場合は、本人が抵抗なく受診できるように配慮しながら促すようにしてください。
認知症の種類
認知症にはさまざまな種類がありますが、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が全体の約8割を占めています。これらの認知症は、できるだけ早期に適切な治療を受けることが重要です。
アルツハイマー型認知症
日本人で最も多い認知症で、脳内にアミロイドβやタウタンパクという特殊なタンパク質が蓄積し、それが脳細胞を破壊することが発症の原因とされています。
症状
- もの忘れが顕著
- 同じ話や行動を何度も繰り返す
- 人や物の名前を忘れる、または間違える
- 時間や場所、曜日の感覚を失う
- 物が盗まれたと思い込む妄想
- 意味のない徘徊
- 本人は忘れっぽいと言う自覚がない
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、脳の血管が詰まったり破裂したりすることで脳にダメージが生じ、その結果発症する認知症です。無症状で進行する「隠れ脳梗塞」が蓄積することで発症することもあります。
原因
脳血管性認知症の主な原因は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害です。血管が詰まることで脳の一部が酸素不足になり、脳細胞が死滅します。出血が起こると、血液が脳組織にダメージを与えます。これらの障害が生じた場所によって、失われる機能や現れる症状が異なります。
症状
- 記憶障害: もの忘れが多くなり、人や物の名前を覚えていられなくなります。
- 時間・場所の認識障害: 現在の時間や場所、曜日の感覚が失われます。
- 計画実行の困難: 予定を立てたり、その通りに行動することが難しくなります。
- 感情の変動: 感情の起伏が激しくなり、突然強い感情が現れることがあります。
- 運動麻痺: 体の一部が動かなくなることがあります。
- 知覚麻痺: 感覚が鈍くなったり、全く感じなくなることがあります。
- 言語障害: 言葉が出にくくなったり、話すことが困難になります。
脳血管性認知症の他にも、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などが存在します。これらの認知症も異なる特徴を持ち、症状だけでは診断が難しいため、専門医の診察と適切な検査が必要です。
認知症の早期発見・早期治療のための検査
当院では、認知症の早期発見と適切な治療のために、さまざまな検査と評価を行っています。具体的には、認知症病型分類質問表(DDQ43)、長谷川式認知症スケール(HDS-R)、時計描画テスト(CDT)を用いた問診を実施しています。軽度認知障害に対してはMoCA-Jと言う検査を行うことがあります。これに加えて、頭部MRI検査も行い、特にVSRAD(認知症の脳画像解析システム)を利用しています。
定期的な検査と評価を受けることで、認知症の予防、早期発見、適切な治療が可能となり、認知症の発症を防ぐだけでなく、進行を遅らせることができます。早めの対応が鍵となり、生活の質(QOL)の維持に大いに役立ちます。
特に、脳血管性認知症の発症や進行には、生活習慣病が引き起こす動脈硬化が深く関わっています。そこで当院では、生活習慣病の既往症を含むトータルケアを提供し、患者様ができるだけ長く健康で充実した生活を送れるようサポートしています。
認知症は早期発見と適切な管理が重要です。定期的な検査を通じて、認知症のリスクを減らし、発症や進行を効果的に予防することができます。また、生活習慣の改善や適切な医療ケアを通じて、生活の質を高める取り組みを行っています。
頭部MRI検査を行い、効果的な認知症予防を
認知症が発症し進行してしまうと治療は困難ですが、早期発見により発症を予防し、進行を遅らせることが可能です。特に脳梗塞や脳出血の早期発見と適切な治療は、予防において非常に効果的です。津田沼中総合病院と医療連携を行い、病院にてMRIを用いた検査を行い、微細な脳血管障害や脳の萎縮を発見することができます。精密な画像検査により脳の状態を詳しく調べることが重要です。
また、頭部MRIによる脳の萎縮の程度を客観的に評価する検査も行っています(VSRAD)。これにより、患者様の脳の状態を詳細に把握し、適切な予防策を講じることができます。
医学会が認めた認知症予防のサプリメント
フェルガード100M(フェルラ酸)は、軽度認知障害に対しての予防効果があると言わており、2017年に日本認知症予防学会にてその効果が初めて認められたサプリメントです。フェルラ酸は、抗酸化作用を持つ天然ポリフェノールであり、米ぬかから抽出されています。この成分は、脳内に蓄積するアミロイドβという蛋白質の働きを抑制し、神経細胞を保護する作用があるとされています。
オキシカット(TwendeeX)は2019年に認知症予防学会において軽度認知障害に対しての予防効果があると認められており、酸化ストレスに対する抗酸化作用が期待されるものです。
βラクトリンは、2020年に認知症予防学会において認知機能改善作用が期待できるとして認められたサプリメントです。βラクトリンは、乳製品の発酵過程で生じる有効成分で、βラクトリンの摂取が脳内でドーパミン量を座羽化させることで記憶力や注意力を向上させると言われています。
*サプリメントは、ビタミンやミネラルなど健康の増進に役立つ特定の成分を濃縮し錠剤やカプセル状にしたものです。その効能効果は個人差があり、摂取しても良い実感がない時にはやめることも大切です。またサプリメントを摂取する際にも生活習慣や食生活の見直しを一緒にすることが大切です。
認知症の予防効果があるアロマセラピー
認知症予防の一環として、アロマセラピーが注目されています。午前中と夜の2つの時間帯に異なるアロマを使用する方法が効果的とされています。
午前中には、レモンとローズマリーの香りを使用します。これらのアロマは、集中力を高め、交感神経を刺激して記憶力を強化する効果があります。仕事や勉強の前にこれらの香りを取り入れることで、パフォーマンスの向上が期待できます。
夜(午後7時~9時半頃)には、オレンジスイートとラベンダーの香りが推奨されます。これらのアロマは、心身をリラックスさせ、副交感神経を刺激して鎮静効果をもたらします。リラックスした状態で就寝することで、質の良い睡眠が得られ、認知機能の改善にも寄与します。
適度な運動、社会活動に参加することで多くの人とコミュニケーションをとること、魚を食べることでDHAやEPAなどのω3系脂肪酸を摂ることなども認知症予防には大切です。