軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)は、認知症の一歩手前の状態であり、適切な対策を講じることで、MCIの改善や認知症の発症予防が可能とされています。MCIの早期発見の重要性や進行を防ぐ方法について説明します。
軽度認知障害(MCI)とはどんな状態?
MCIとは、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment)のことを言います。MCIは認知症絵はないものの、健常な認知機能と認知症の中間の状態を指します。認知機能には記憶力や注意力などが含まれますが、MCIの場合、これらの機能が低下しているものの、日常生活には支障をきたさない程度です。厚生労働省による定義では、以下の条件を満たす状態をMCIとしています。
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
- 日常生活動作は自立している
- 本人または家族による物忘れの訴えがある
- 全般的な認知機能は正常範囲である
- 認知症ではない
高齢化社会が進む中、認知症の発症率も上昇しています。2012年の全国調査では、日本の認知症高齢者は約462万人と推定されており、2025年には約700万人に達すると予測されています。65歳以上の高齢者の約15~25%がMCIであると推定されており、その多くが認識されないまま放置されている可能性があります。
認知症への進行を防ぐことはできる?
軽度認知障害(MCI)は、1年に約5~15%の人が認知症に移行すると言われていますが、その一方で1年に約16~41%の人は健常な状態になることが分かっています。そのため、早期から適切な対策を行えば正常な状態に戻る可能性もある状態です。MCIを早期に発見し、対処することが認知症予防において重要です。
MCIの進行を防ぐためには、以下の方法が効果的です。まず、健康的な食生活を心がけることが挙げられます。野菜や果物、魚などを積極的に摂取し、高カロリー・高脂肪の食事は控えましょう。次に、定期的な運動を行うことが推奨されます。有酸素運動やウォーキングなどを週に数回取り入れると良いでしょう。さらに、認知機能を刺激する活動も大切です。読書やパズル、楽器の演奏など、脳を使う活動を続けることで、認知機能の維持が期待できます。
高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある場合、これらの管理も重要です。持病の治療を続けることで、MCIから認知症への進行を防ぐ助けとなります。早めの対応が、認知機能の低下を遅らせる鍵となります。
MCIから認知症への進行を防ぐために
MCIは必ずしも認知症に進行するわけではなく、正常な状態に戻る可能性もあります。そのため、早期の発見と対策が重要です。以下に、MCIを改善するための具体的な方法を紹介します。
1. 健康的な食事
栄養バランスの取れた食事は、脳の健康維持に欠かせません。特に以下のような食品を積極的に摂ることが推奨されます。
- 野菜や果物:ビタミンや抗酸化物質が豊富で、脳の老化を防ぎます。
- 魚:特に青魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、脳の健康をサポートします。
- ポリフェノールを含む食品:ココアやベリー類など、抗酸化作用があり脳に良い影響を与えます。
- 高カロリー・高脂肪食の制限:これらの食品は認知機能の低下を促進する可能性があるため、控えることが大切です。
2. 適度な運動
定期的な運動は、脳の血流を改善するため、運動習慣がある方は、認知症のリスクが低くなることが知られています。認知症になってしまった方の13%が運動不足に関連すると言われいます。散歩程度の運動を週3回以上続けると、運動習慣のない方に比べて33% が認知症になりにくいと言われています。
また、ウォーキングよりハードな運動(早歩きなど)を週3回以上続けると、運動習慣のない方に比べて50% も認知症になりにくいと言われています。
有酸素運動や筋トレが効果的とされています。さらに、複数の運動プログラムを行うことが効果的とされています。
3. 認知機能トレーニング
脳を活性化する活動を継続的に行うことで、認知機能の低下を防ぐことができます。
- 読書:新聞や本を読むことで脳を刺激します。
- ゲーム:パズルやボードゲームなど、楽しい活動を通じて認知機能を鍛えます。
- 楽器演奏:新しいスキルを習得することは、脳の健康に良い影響を与えます。
軽度認知障害(MCI)を早期発見するには
日常生活の中で、以下のようなサインが見られたら、MCIの可能性を考え、医師に相談することが重要です。
- 少し前の出来事を頻繁に忘れる
- 新しい情報を覚えるのが困難
- 複数のタスクを同時に処理できない
- 家事や仕事でのミスが増える