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群発頭痛

3大慢性頭痛の中でも極めて痛みが強い群発頭痛

長期にわたり繰り返し起こる代表的な慢性頭痛には、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つがあります。

片頭痛

日本人の約8.4%は片頭痛持ちと言われています。痛みは「片側」だったり「両側」だったり、「ズキズキ」したりしなかったりと個人個人で多少異なりますが国際頭痛分類により診断基準が定められています。

近年では片頭痛に伴う労働遂行能力低下(プレゼンティーズム)が問題になっており、本邦では年間約3600億~2兆3000億円の経済的損失があるとも言われています。

緊張型頭痛

緊張型頭痛は、日本人に最も多く見られる頭痛の一つで、頭や後頭部が締め付けられるように感じられることが多い症状の頭痛です。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、長距離運転などが原因で筋肉が緊張し、頭痛を引き起こします。ストレスや精神的な緊張もこの頭痛の要因です。

群発頭痛

群発頭痛は、特に男性に多く(女性の3~7倍)見られる頭痛で、片側の目にえぐられるような強い痛みが起こる頭痛です。頭痛発作時には「涙が出る」「鼻水が出る」「痛くてじっとしていられない」などの症状を伴います。群発期には頭痛は定期的に起こり、1~2ヶ月続くことがあります。突然激しい痛みが10分から3時間ほど続きます。

群発頭痛にも「適切な急性期治療(頭痛薬)」だけでなく、「予防療法」を行うことがあります。

群発頭痛について

痛みが起こるのは片側の目の奥が中心

痛みが起こるのは片側の目の奥が中心群発頭痛は片側の目の奥や眼球、側頭部を中心に激しい痛みが特徴です。発症すると、必ず同じ側に痛みが生じ、途中で反対側に移ることはありません。

痛みの側の顔面や目、鼻に以下のような症状を伴うことが多いです。顔面では額や顔面の発汗、目には涙、充血、まぶたのむくみ、眼瞼下垂(まぶたが下がる)、瞳孔の縮小が見られます。鼻の症状としては鼻水や鼻づまりが挙げられます。また、痛みが側頭部や下あご、歯に広がることもあります。時には興奮したり、落ち着きのなさがみられることがあります。
片頭痛の場合は暗くて静かなところでじっとしたくなることが特徴ですが、群発頭痛では痛みが激しすぎてじっとしていられないのが特徴です。痛みがあまりにも強烈なため、絶叫したり転げまわるほどの苦痛を感じる人もいます。このような痛みは放置できないため、多くの人がすぐに医療機関を受診しようとしますが、群発頭痛はまれな病気のため、正確な診断が難しいこともあります。

群発頭痛には発作時に対する急性期治療と発作を軽減させるための予防療法があります。適切な診断や治療を受けるためには、頭痛の専門医に診てもらうことが重要です。日本頭痛学会のウェブサイトでは、最寄りの認定頭痛専門医を調べることができます。専門医の診察を受けることで、正しい診断と適切な治療を受けることができ、痛みの管理に役立ちます。

群発期の最適な過ごし方とは

群発頭痛の原因や発症のメカニズムについてはまだ完全に解明されていませんが、現在のところ以下の3つの有力な説があります。

  • 海面静脈洞説

海面静脈洞内の内頚動脈が拡張することにより眼の中(眼窩)への血流が増加し、その結果として片側の眼やその周囲の痛みや症状が出る説。

  •  海面静脈洞近傍説

海面静脈洞の神経に何らかの興奮が生じると、自律神経症状に加え内頚動脈に拡張が生じる説。

  •  破裂孔近傍説

何らかの原因で頭蓋骨の一部(側頭骨)の中にある内頚動脈が拡張し、炎症を起こすことで頭痛が起こる説。

これらの説にあるような何らかの刺激により内頚動脈が拡張するとされています。拡張した血管に強く圧迫され、感覚神経や自律神経の交感神経が刺激されます。

これにより、脈打つような痛みが発生し、同時に痛む血管からの信号によって結果的に副交感神経が活性化し、痛みのある側の涙や充血、鼻水、鼻づまりといった症状が生じやすくなると考えられています。血管の拡張と自律神経のバランスの乱れが、群発頭痛の発作を引き起こす原因の一つとされているのです。

群発頭痛の発作が起きる群発期には、以下のようなことに注意することが重要です。

脳の血管が拡張することを避ける

群発期にアルコールを摂取すると激しい痛みを引き起こす可能性があるため、発作が起きている期間はアルコールを一切摂取しないようにしましょう。また、熱いお風呂やサウナ、辛い食事、激しい運動なども群発期には避けるべきです。喫煙との報告もあり、日ごろから喫煙は控えた方がいいかもしれません。

自律神経のバランスを崩さないような生活を心がける

毎日できるだけ決まった時間に起床し、就寝するなど、規則正しい生活を送りましょう。十分な睡眠時間を確保することも大切です。また、気圧の変化にも注意が必要です。群発期には飛行機の搭乗やスキューバダイビングなど、気圧の影響を受けやすい行動やスポーツは控えることをおすすめします。

これらの対策を講じることで、群発頭痛の発作を予防し、発作時の症状を軽減することができます。群発頭痛に関する知識を深め、適切な対策を講じることで、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。

速やかに頭痛の専門医を受診し、適切な治療を

群発頭痛は、市販の鎮痛薬では改善が期待できないため、発作が起きた場合には速やかに頭痛の専門医を受診し、適切な治療を受けることが重要です。群発頭痛の治療には、以下のような治療法が用いられます。

わが国ではスマトリプタンの皮下注射が保険適応です。頭痛は夜間に多くみられることもあり、そのためスマトリプタンの自己注射が一般的です。トリプタン製剤は、頭痛の発作を抑える効果が高く、速やかな効果が期待できます。また、自宅で発作が頻繁に起こり、発作後10分以内に対処できる場合には、純酸素吸入が有効です。具体的には、フェースマスクを用いて100%酸素を7リットル分、15分間吸入する方法があり、これは健康保険の適用も受けられます。

群発頭痛は決まった時期に発生することが多いですが、発作がいつ起こるか予測することは難しいです。場合によっては1日に数回起こることもあります。現時点では、「次の群発期が来ないように予防する」という治療法は存在しませんが、予防薬の適応外使用が行われることがあります。これらの予防薬については、医療従事者と相談し、適切な治療計画を立てることが重要です。

群発頭痛の予防には、日常生活の管理も重要です。規則正しい生活習慣を維持し、十分な睡眠を確保することで、発作の頻度や重症度を軽減することができます。また、発作のトリガーとなるアルコールやストレスの管理も欠かせません。

群発頭痛は、患者様の日常生活に大きな影響を与えるため、専門的な診断と治療が必要です。頭痛専門医の指導のもとで適切な治療を受けることで、症状の緩和と生活の質の向上を図ることができます。適切な治療と予防策を講じることで、群発頭痛の影響を最小限に抑えることが可能です。医療従事者と緊密に連携し、自分に合った治療法を見つけることが、群発頭痛との付き合い方の鍵となります。