緊張型頭痛とは
代表的な緊張型頭痛は、軽度から中等度の痛みを伴い、頭全体がベルトで締め付けられるような感覚が特徴です。緊張型頭痛は一次性頭痛の中では最も頻度が高い頭痛ですが、正確な病態や発症機序はまだ解明されていません。
一次性頭痛は、脳に明らかな異常がないにもかかわらず発生する頭痛です。主な種類には「片頭痛」、「緊張型頭痛」、群発頭痛などの「三叉神経・自律神経性頭痛」などがあります。これらの頭痛は、日常生活に大きな影響を与えるため、正確な診断と適切な治療が重要です。一方、二次性頭痛は何か他の疾患が原因となり新規の頭痛を発症したものを言い、代表的な疾患は「くも膜下出血」や「脳腫瘍」が挙げられます。他にも「髄膜炎」「精神疾患」などの多くの病態が二次性頭痛の原因となります。二次性頭痛は一次性頭痛と比べると、生命の危険を伴う疾患が多く、早急に専門施設での診断と治療が必要なることがあります。
緊張型頭痛の原因
現在緊張型頭痛は、筋肉の緊張による「身体的ストレス」と「精神的ストレス」のどちらでも起こり得る疾患です。長時間の姿勢不良や運動不足などが原因になることが多いです。
- 睡眠不足や疲労など、十分な休息が取れないと、体全体の疲労が蓄積し、頭痛が発生しやすくなります。
- 運動不足も原因となり、適度な運動が不足すると、血行不良や筋肉の緊張が頭痛を引き起こします。
- 長時間のデスクワークは同じ姿勢を長時間続けることで、筋肉が固まり頭痛を感じやすくなります。
- デジタル機器の長時間使用も原因となり、携帯電話やパソコンを長時間使用することで、目や首に負担がかかり頭痛を誘発します。
緊張型頭痛の症状
緊張型頭痛は、頭をベルトで締め付けられるような感覚から始まり、前頭部や眼の周辺から頭全体に広がっていくことが特徴です。この頭痛には、反復性と慢性の二つのタイプがあります。
反復性緊張型頭痛は、月に15日未満の頻度で発生し、痛みの強さは軽度から中等度です。持続時間は30分から数日間にわたり、吐き気は伴わないものの光過敏か音過敏のどちらか一方を伴う事があります。眠っている間に頭痛がひどくなって目が覚めることは通常ありません。
一方、慢性緊張型頭痛は、3ヶ月を超えて月に15日以上続く場合を指します。このタイプの頭痛では、発作の回数が増える事により、鎮痛薬の服薬日数が増え、「薬物使用過多による頭痛」に注意が必要です。1日の中で痛みの強さが変動することもありますが、ほぼ常に痛みを感じる状態が続きます。慢性緊張型頭痛は、日常生活に支障をきたすことはあるものの、通常は寝込むほどの重度にはなりません。
緊張型頭痛はその頻度や痛みの強さに関わらず、適切な予防と対策が重要です。症状が長期間続く場合や日常生活に大きな支障をきたす場合は、専門医の診察を受けることをお勧めします。
緊張型頭痛の検査方法
緊張型頭痛の診断には特定の検査は存在せず、主に患者様の訴えや症状に基づいて行われます。頭痛の特徴や発症パターン、患者様の既往歴、身体検査などを総合的に評価して診断します。他の疾患を除外するために、必要に応じて血液検査や画像検査が行われることもありますが、緊張型頭痛そのものに特異的な検査はありません。そのため、痛みが発生した際には詳しく日記などに記録を残しておくことが、診断に役立ちます。
СТ検査
CT(computed tomography)スキャンは、コンピュータ断層撮影法であり、ベッドに仰向けになりドーナツ状の機械の中を通ることで、身体に多方向からエックス線を照射し、透過したエックス線を検出して断層画像を生成します。短時間で全身の様々な部位を検査することができ、詳細な観察が必要な場合には造影剤を使用します。造影剤は静脈注射されることが多く、特定の物質を含むためアレルギー反応を引き起こす可能性があります。アレルギーの有無や腎機能の状態については、事前に医師に相談することが重要です。尚、CTスキャンはX線を使用した検査のため被曝を伴います。
MRI検査
MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、磁気共鳴画像法であり、大きな磁石による磁場の中で体内の水素原子の核磁気共鳴現象を測定し、コンピュータで解析して内部構造を画像化します。エックス線を使用しないため、被ばくの心配がありません。MRIは、特に脳や脊髄の詳細な画像を得るために有効です。
緊張型頭痛の治療方法
頭痛が時々しか発生せず、日常生活に大きな影響を与えない場合、特に治療を必要としないこともあります。しかし、頭痛が日常生活を制限するほど頻繁に起こる場合や、痛みが増している場合は、適切な治療が必要です。
軽度から中等度の緊張型頭痛は市販の鎮痛薬で痛みを軽減することが可能な場合もあります。また、痛む場所をマッサージすることでも痛みを和らげることができます。
市販薬で効果が見られないような重度の緊張型頭痛の場合は医療機関での治療が必要になります。鎮痛薬を基本とした急性期治療に薬物療法及び非薬物療法も考慮した予防療法を行います。重度の緊張型頭痛の症状は、時として緊張型頭痛ではなく片頭痛の可能性も考えられます。市販されている一部の鎮痛薬にはカフェインが含まれており、カフェインの摂取も痛みの緩和に役立つことがあります。カフェインは中枢神経を刺激し、頭痛の軽減に効果がありますが、適量を守らなければ、逆に頭痛を引き起こすことがあります。
鎮痛薬の過剰摂取は、薬物乱用頭痛を引き起こす可能性があることに注意が必要です。これは、鎮痛薬の使用を続けることで毎日起こるようになる頭痛です。カフェインの過剰摂取はカフェイン離脱頭痛の原因になったり、片頭痛を悪化させることがあります。そのため、適切な量と期間を守ることが重要です。薬の使用は医師の指導のもとで行うことが推奨されます。
頻度の高い反復性緊張型頭痛や慢性緊張型頭痛には、抗うつ薬などの予防薬の使用が効果的です。加えて、ストレスマネジメント、リラクゼーション、理学療法、鍼灸などの非薬物療法も有効です。具体的な対策として、頭痛体操も推奨されており、日常的に取り入れることで症状の軽減が期待できます。
緊張型頭痛の管理には、ライフスタイルの改善と適切な治療の組み合わせが重要です。医師と相談しながら、自分に合った治療法を見つけることが、症状の改善につながります。
頭痛体操
緊張型頭痛は、精神的または身体的ストレスにより首や肩の筋肉が緊張することで起こる可能性が考えられます。これに対して、ストレッチや体操は非常に効果的な対策となります。特に、頭痛体操は日本頭痛学会のウェブサイトでも紹介されており、実践しやすい方法として推奨されています。
頭痛体操の一つとして、腕を振る運動があります。これは、正面を向いたまま頭を固定し、両肩を大きく回転させるものです。この動きにより、首の周りの筋肉(インナーマッスル)をリズミカルにストレッチすることができます。約2分間続けることで、筋肉の緊張をほぐす効果が期待できます。
次に、肩を回す運動があります。ひじを軽く曲げ、肩を前後に回転させます。これを6回繰り返します。慣れてきたら、僧帽筋にしっかりと刺激を与えるために、肩を大きく回すようにします。
また、椅子に座ったまま行える運動も有効です。椅子に座り、両足を揃えて正面を向いたまま、左右の肩を交互に前に出しつつ体を回転させます。この動きにより、筋肉の緊張を和らげるだけでなく、血行を促進する効果があります。
これらの体操やストレッチは、緊張型頭痛の予防や症状の軽減に役立ちます。日常生活に取り入れることで、頭痛の頻度や強度を減少させることが期待できます。